補綴治療について(クラウン編)

みなさんこんにちは。

勝沼歯科医院の勝沼智彰です。

前回に引き続き補綴治療について書かせていただきます。

今回は補綴治療の中でも最もよく行われる歯の被せものの治療について詳しく書かせていただきます。

被せものの事を専門用語では「クラウン」と言います。

歯が機能するためには歯の中の咬頭と隆線や窩が接触することにより機能を発揮します。

クラウンは歯をすっぽりと覆う治療であるためこの機能に必要な咬頭や隆線や窩が全て人工的に作られたものによって補われる事になります。歯の形や接触させる位置などによってその歯の機能にも影響します。

成人のヒトの歯は親知らずを抜いて前から奥まで7本の歯があり上下左右で合計28本あります。1本1本の歯が全て違う形をしており、それぞれの歯にそれぞれの役割があります。

食べ物を食べるにも咬み切る役割、硬いものをかみ砕く役割、かみ砕いたものをさらに細かくすり潰す役割などがそれぞれの歯に備わっています。

さらに、咀嚼運動をするときの顎の動きをコントロールする役割や

上下のかみ合わせの位置関係を安定させる役割など

28本すべての歯がお互いの役割を持つことにより、1本の歯だけに負担がかかり過ぎることもなく、尚且つどのような食物であってもほぼ咀嚼することが出来るのです。

自然界の動物であれば通常食べられるものはかぎられています。草食動物はその名の通り草を食べます。これは歯の形や顎の動きが草を食べることしかできない造りになっているからです。しかも、咀嚼してから嚥下するまでに膨大な時間を要します。

サメの歯は何度でも生え代わる事で有名ですが、これもまた歯の形が単純かつ機能も獲物を捕らえるためだけのものなので生え代わっても支障がないのです。

しかし、ヒトの歯は乳歯から永久歯に生え代わった後一生生え代わりません。

6歳臼歯と呼ばれる第一大臼歯は咀嚼に最も関与している歯といわれていますが、この歯は6歳に生えてきてから一生生え代わらないのです。

実はこの、生え代わらない事にも意味があるのです!

先程も書きましたが、ヒトの歯にはそれぞれの役割がありほぼ何でも食べられます。しかも短時間で。

そのためには歯の形やかみ合わせの接触の状態、そして咀嚼時の顎の動きなどが、効率よく咀嚼でき、尚且つ歯に過度な負担がかからないようになっていなければなりません。

実はこの歯の形は年齢とともに少しずつ変化しているのです。歳をとれば口の中の環境も当然変化していきます。それに伴い、歯の形も少しずつ変化していっているのです。

ですので何度も生え代わってしまうと、歯の形が少しずつ変化して体の変化に適応することが出来なくなります。

このような優れたメカニズムが天然の歯には備わっているのです。

ですので1本の歯を人工的な被せもので治療をする際には、できる限りこの天然の歯に近い状態を再現してあげることが非常に大切になってきます。

たかが1本といえ、甘く見てはいけないのです!