みなさん、こんにちは。
勝沼歯科医院の勝沼隆之です。
暖かくなりましたね!
もう夏も間近という感じです。
夏の前の生命の漲ってくる感じが、私はとても好きです。
さて、前回は歯周病のメカニズムについて、歯ぐきが赤く腫れたり出血しやすくなる状態というのは、細菌がそうせしめているわけでは決してなく、身体が自身を守るため免疫機構が働いた結果、そこに炎症が起こる。
ということを説明させていただきました。
今回はその続きを、もう少し深く入り込んだところまでお話をさせていただきたいと思います。
歯ぐきが腫れたり、出血しやすかったり。
炎症が歯ぐきに限局しているうちにその原因を除去することが出来れば、炎症反応は治まり、歯ぐきは元の健康な状態に戻ります。
“原因を除去することが出来れば”と書きましたが、インフルエンザや風邪などと歯周病とではいくつかの違いがあります。
その一つは、インフルエンザ等と違い歯周病の原因菌は免疫の力だけで排除することが出来ない。ということです。
その理由は、歯周病の場合細菌は単体として存在しているのではなく、様々な菌種が集合体としてプラーク(バイオフィルム)を形成し、細菌たちはそのバリアに守られているからです。
そのバリアに守られている限り、その中までは免疫の力が及びません。
免疫に限らず、これは薬の服用においても同じことがいえます。
プラークのバリアというのは思っているよりも高性能で、抗生剤や抗菌薬もこの中まで浸透することが出来ません。
また、歯周病菌はその一つ一つの毒性が非常に弱いのが特徴です。
毒性が弱いが故に、抗体が産生されないのです。
ですから、一度歯周病になりそれが治ったとしても、再び環境が悪くなれば2回目3回目、10回目20回目も同じように歯周病になります。
身体に備わっている免疫の力だけでは原因を除去することが出来ないとなれば、他の手段で原因を除去するしかありません。
他の手段とは…
そうです、歯磨きです。
歯磨きが唯一にして最大の効果を得られる方法なのです。
私たち、歯科医師や歯科衛生士によるプロフェッショナルケアとよばれるものは、あくまでその手助けでしかないのですね。
話が少し逸れましたが、歯周病の原因であるプラークが除去されずにそのままの状態が続くと、炎症はさらに深くまで波及していきます。
深く炎症が波及してくると、今度は歯ぐきの内側にある歯槽骨に影響が及びます。
歯槽骨にまで細菌の感染が及びそうになると、身体はどのような炎症反応を起こすのでしょうか。
答えは、骨を壊すという形で炎症を起こします。
具体的には、プラークの存在する部位に一番近い部分から骨の破壊が起こります。
もしも骨の破壊が起こらなかったらどうなるのでしょう。
歯槽骨は細菌の感染に巻き込まれます。
骨が感染に巻き込まれると、骨自身に炎症反応が起こります。
まずは骨を覆っている骨膜に、さらに深くに波及すれば骨髄が細菌感染に対して炎症を起こします。
そして、その炎症は顎骨全体に波及していき、さらには骨の中にも血管が沢山走行していますので、その血管を通じて細菌は全身に巡りわたります。
1本の歯の歯周病で、起こるべき炎症反応が起こらないとすれば、その代償として顎骨全体に炎症が波及し顎骨は壊死するでしょう。それと同時に全身に細菌が流れ込んでいくと、免疫力の低下している方であれば菌血症という状態を経て最悪敗血症で命を落とすことにもつながりかねません。
たった1本の歯の歯周病が命を落とすことに直結するとしたら、こんなに恐ろしいことはありませんね。だって最初に申した通り、日本人の成人の8割以上の人が何らかの歯周疾患を抱えているとしたら、その8割の人が死に直結する状況に置かれているということです。成人の8割です。
もしそんなことになったら日本は歯周病によって破滅してしまいますよね。
そうならないために、
骨が歯周病菌に感染しないために、
体は自らの骨を破壊してでも、病気のある所から距離をとるのです。
まさに歯も全身の一部だということを感じられる働きが起こっているのですね。
そして、歯槽骨の破壊が進行していくと歯は揺れて咬めなくなり、さらに進行し支えている骨すべてを失うと歯は抜けてしまいます。
これが歯周病のメカニズムです。
次回は
では歯周病は治すことが出来るのか?
その治療法について少しずつお話させていただけたらと考えております!
なにかご質問等ありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
よろしくお願いいたします☆